前回は、隙間を埋めるシーリング(目地)の大切さと、その難しさについてお話ししました。 今回は、さらに踏み込んで、家づくりに欠かせない「釘、ビス、ボルト」の話をしようと思います。
家を建てる際や、何かを新しく取り付ける際、どうしても「穴」をあけて固定する作業が必要になります。実は、この何気ない釘一本の打ち方が、家の寿命を大きく左右することがあるのです。
躯体に「穴をあける」ということ

板金工事や、アルミのベランダの取り付け……。
これらはすべて、建物の大事な骨組みである「躯体(くたい)」に対して、釘やビス、あるいは太いボルトを打ち込んでしっかり固定する作業です。
ここで少し想像していただきたいのですが…。 家を雨から守っている「防水シート」に、穴をあけて金属を通すわけです。そこには当然、わずかであっても「水が入り込むリスク」が生まれます。
技能のある職人は、そのリスクを自分の目でしっかり見極めます。
「この角度で打てば、雨水が伝わって中に入ることはない」
「この場所なら、もし水が入ってもすぐに逃げていく」
そうやって、雨風の動きを頭の中で描きながら、一カ所ずつ丁寧に止めていくのです。
「シーリングをすれば大丈夫」という思い込み
ところが、最近の現場では「しっかりボルトで止めて、周りをシーリングで固めておけば大丈夫だろう」という、少し心配な仕事を見かけることがあります。
もちろんシーリングは大事ですが、それはあくまで補助のようなもの。
一番大切なのは、釘やボルトを打ち込む「場所」や「打ち方」そのものの見極めなのです。
例えば、ボルトを止める際の「座金(ざがね)」周りの処理ひとつとってもそうです。
単に締め付けるだけでなく、その貫通した部分からどうやって水を入れないようにするか。サッシ廻りやベランダ廻りの施工などと同じように、細心の注意が必要です。
実例:ちょっとした見極めで、雨漏りは止まる
私が修理に伺う現場でも、この「釘やボルトの止め方」が原因で雨漏りしているケースがとても多く見られます。
以前、他の業者さんに「壁を張り替えないと直らない」と言われて困っていたお客様がいらっしゃいました。ご依頼を受けて現場調査をしたところ、原因は金具を止めているボルトの場所にありました。そのボルトを伝って、雨水が壁の奥まで入り込んでいたのです。
そこで、水の流れを考えた正しい位置にボルトを打ち替え、適切な処置をしたところ、それだけで雨漏りは止まりました。
大きな工事をしなくても、こうした「見極め」ひとつで解決できることはたくさんあります。大切なのは、古いからと諦める前に、本当の原因を見つけることなのだと思います。

10年後、20年後の「安心」をつくるために
「家という形」を完成させるだけでなく、10年経ってもし外壁を剥がしてみたときに、釘の周りの木材が一本も傷まず、きれいな状態を保っている。
それが、私たちが目指している「きちんと」した仕事の形です。
最新の設備やデザインも素敵ですが、まずは釘一本、ボルト一つの「場所」と「打ち方」にどれだけの想いを込めるか。 それが、皆さんの大切な家を、想像以上に長生きさせるための一番の近道だと私は信じています。
次回のブログでは、これらを取り付ける際の土台となる「下地材の選択や屋根材の種類」による違いについてお話ししようと思います。
